その日は雨が降っていた。
ザ―という雨音が響き渡る。
ここは誰もいない普通の公園。
しかし、誰もいないはずの公園に、3人の人影がある。
「しつこい!!これは決定事項だ。お前の息子はこちらが貰って行く!!」
「止めてください!!」
「頼む、俺達で出来る事なら何でもする!!だからあいつには……息子には手を出さないでくれ!!」
最初に怒鳴ったのは男性と言うよりも、少年と言った方が正しい。
そして、男性と女性が頭を下げていた。
「分かった。ならあんた達の息子にはしばらくは手を出さない」
二人の懇願が功を奏したのか、少年は二人にそう言った。
「本当ですか!!」
「あ、ありがとうございます!!」
二人は少年の言葉に胸をなでおろした。
しかし、それは早すぎた。
「ああ、あの子には時が来るまでは手を出さないことを約束しよう。ただし……」
「ただし、何ですか?」
女性が少年に問いかけた。
もともとこの夫婦は手を出さない間に、逃亡するつもりだったのだ。
しかし、その計画はもろくも崩れることになった。
「お前らの命と引き換えにな」
少年の言葉と同時に、雷が鳴り響く。
「そ、そんな!!」
「当然だ。これはこちらの存亡をかけるほどの事案だ。その事案を僕は放っておくことは出来ない」
少年はそう理由を言った。
「逃げるぞ!!」
絶望したような表情をする女性の手を引いて男性が走り出す。
「逃げても無駄だ。僕から逃げられるものは……この世にはいない!!その事をあの世でしっかりと刻むんだな」
少年は逃げる二人を冷ややかな目で見ると、長い棒のようなものを手にした。
「高月家儀流・終幕、死への宴!!」
「「ぎゃああああ!!!」」
少年から放たれた紫色の光が二人を包み込む。
それと同時に、二人はもがき苦しんでいた。
「あ……―――――」
そして、二人は同時に人形のように地面に倒れた。
「大丈夫だ。お前らの息子も後であんたらの所に行くから」
少年は二人が死んでいるのを確認すると、そう呟いた。
「っち!!引くか」
遠くの方から、パトカーのサイレン音が近づいてくるのを感じた少年は、音もなくその場から姿を消した。
すると、そこには誰もいなかったかのように静かになった。
その日は雷が鳴り響き、雨が降り続ける夜だった。
ただ変わっていたのは、二人の人間が死んだ事だけだった。
続く。
―次回予告―
その人物は幼いころに両親を亡くした、少年。
その少年の周りには支える人がいた。
「今日ね『直人君も一緒に夕食を食べないか』ってお父さんが誘ってたんだけど、どうかな?」
「そうだな……毎日行くわけにもいかないからいいや。ありがとうって伝えておいてくれる?」
そして少年は疑問に思う。
(俺の両親はなんで、死ななければいけなかったんだ)
少年は行動を始める。
その答えが、例え自分にとってつらい物となってでも。
次回、Lonely boy第1話「神が宿る町」お楽しみに。
〜あとがき〜
と言う事で、プロローグとなります。
今回は気づかれた方がいると思いますが、公認でのオリキャラが登場しています。
次回は少年の日常と、彼の住む町が中心になります。
それでは、これからもよろしくお願いします。
TRでした。