プロローグ
時はいつでも流れ続ける。
しかし時には気まぐれが存在する。
この物語はその気まぐれが起こした、辛くて悲しい事件の記録である。
それでは紐解いてみよう。
私が素晴らしき世界へと誘います。
え?
私ですか?
申し遅れました。
私は”時の管理人”と申します。
それでは覗いてみましょう。
それは俺達に伝えられた知らせだった。
「なのはが撃たれて落ちた!?」
「すまねえ。あたしが……あたしが守れなかったばかりに」
俺の幼馴染であるなのはが、不慮の事故に遭ったという物だった。
俺達はなのはの回復を、心から祈っていた。
それから数日後。
「ごめんね、みんな。心配を掛けて」
「ううん。そんなことは気にしなくても良いんだよ」
「そうだよ謝るよりもまずは静養だぞ」
意識を取り戻したなのはのお見舞いに行った俺達は、なのはの謝罪にそう返した。
「うん、絶対に元気になるよ」
「ああ。待ってるからな」
この時俺とフェイトにはやて、ヴィータやシグナムさん達の全員が、なのはが回復するという事を信じて疑わなかった。
しかし、その期待は脆くも破られる事になった。
「なのはが……」
「行方不明!?」
はやてから知らされた事に、俺達は驚愕した。
詳しく言うと、今朝看護婦が病室に行くとそこになのはの姿が、なかったらしい。
残されていたのは一冊の名前のない魔導書と走り書きのメモだった。
「それで、そのメモがこれか」
「うん」
俺はフェイトが手にしていた紙を覗き見た。
そこにはこう記されていた。
『みんな、ごめんね』
たった一文だけだった。
「そしてこの魔導書やね」
はやてはそう言いながら魔導書を開いて皆に見えるように、テーブルの上に置いた。
それは全くの白紙状態だったが、最初の一ページにこう記されていた。
『落ちし羽の折れた小鳥は迷い鳥の如くさまよい、いずれしは知られぬ力に囚われる』
これにはさらに続きがあった。
『冒涜せし命の源が牙を剥き偽りの正義を滅ぼすだろう』
「意味が分からないな」
「うん。私でも少しだけ解読してみたんだけど、これしか」
俺の言葉にフェイトは一枚の紙をテーブルに置いた。
『落ちし羽の折れた小鳥(なのは)は迷い鳥の如くさまよい(行方不明になる)いずれしは知られぬ力に囚われる』
「う〜ん。この”偽りの正義”って何を指してるんだろう?」
俺はそう疑問を口にした。
そうだ。
この時から俺達の物語が始まったのだ。
そして時が経ち、数年後になる。
続き。
―次回予告―
始まりを告げるは行方不明の登場。
「え!?なのはが現れただと!?」
「う……うん。それ……でわた……し達も、抵抗……したん……だけど、秘宝が……盗まれ……た」
それはもっとも悲しい秘宝事件の幕開けでもあった。
次回、第1話「突然の襲撃者」お楽しみに。